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その名は最古の楽器に、その姿は革の聖地へ

SYRINXの由来

革のスピーカーからはじまったSYRINX(シュリンクス)。

SYRINXとはギリシア神話の牧羊神パンが手にする葦笛(パンフルート)の別名で、世界で最も古い楽器の一つと言われています。

牧羊神パンは、ある日、たまたま目にした美しい妖精シュリンクスを激しく恋するようになりました。半獣神の気持ちに応じることのできなかったシュリンクスは、逃れるために、みずからの姿を川辺に生える葦に変えてもらいました。パンは、その川葦を切り取り、笛を作り、それを奏でては自分の心を慰めたといいます。
パンフルートPhoto : ©︎Kazuhiro Shiozawa, 2020
楽器製作 : Radu Nechifor(Fumiko Sakuraoka所蔵)

500年前を起源とするOptima

SYRINXのロゴには、「Optima(オプティマ )」という優雅で気品のあるフォントを採用しています。

そして、Optimaは、革と不思議な縁のあるフォントです。

Optimaはドイツの書体デザイナーのヘルマン・ツアップ氏(1918~)の代表作です。ツアップ氏は、1950年にフィレンツェを旅行中に立ち寄ったサンタ・クローチェ教会(Basilica di Santa Croce)で見つけた15世紀の墓石の碑文に衝撃を受け、その形を手元にあった1000リラ紙幣に描き残します。

そのスケッチを元に、500年前のデザインは新しい生命を吹き込まれ、Optimaとして生まれ変わりました。

Optimaフィレンツェ サンタ・クローチェ教会の墓石の碑文

音と革を結ぶ

フィレンツェといえば、芸術的な革製品の生産地であり、革職人にとって聖地とも言える街です。
そしてツアップ氏が訪れたサンタ・クローチェ教会は、特に革と縁の深い教会です。教会内には、世界各国から学生が集う有名なレザースクール「Scuola del Cuoio」が併設され、サンタ・クローチェ教会地区は皮革製品職人街として発展しています。

そして、この教会からアルノ川を降ること約40km、同名のサンタ・クローチェ(Santa Croce)という街に辿り着きます。ここは、植物タンニン鞣の生誕の地といわれ、ヨーロッパで最大の鞣し地区の一つです。250以上の名だたるイタリアンレザーのタンナーが集積しています。

音のために柔らかく重たい革を探し、サンタ・クローチェで鞣されたヴァケッタレザーに出会い、そこからSYRINXは始まりました。現在もほとんどの製品は、サンタ・クローチェで鞣された革を採用しています。

プロポーションの美しさから採用したOptimaですが、詳しく調べると神秘的ともいえる不思議な繋がりが次々と見つかり、運命的な縁を感じさせます。

その名は最古の楽器に、その姿は革の聖地へ。
SYRINXは音と革を結びます。