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知的財産権の解説

知的財産とは

特許法第1条に、
『この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする』
とあります。
発明や考案は、制度により適切に保護がなされなければ、他人に盗まれないように、秘密にしておこうとするでしょう。
しかしそれでは、発明者自身もそれを有効に利用しにくく、他の人も同じものを発明しようとして無駄な研究、投資をすることになります。
知的財産権制度は、発明者に、一定期間独占的な権利を付与することで、その発明を公開し、利用を図り、さらに新たな技術の進歩を促進し、産業の発達に寄与しようというものです。

意匠権とは

知的財産権には、特許権、実用新案権、意匠権、商標権などがあります。
SYRINXは、特許権、意匠権、商標権など、多数保有していますが、最も数が多いのが意匠権になります。
意匠権とは、模様・色彩・建築物の形状・画像などのデザインを保護する権利です。「特許庁」への出願手続をし、審査を経て登録された場合に発生します。
このコラムでは、意匠権についてさらに深掘りします。

意匠権侵害について

意匠権侵害とは、意匠の独占権が存在するにも関わらず、意匠権者に無断で、意匠登録されたデザインと同じデザインあるいは類似のデザインの商品を販売したり、輸入、レンタルする行為をいいます。意匠権侵害行為は「意匠法」という法律で禁止されています。

では、どういった場合に意匠権侵害となるのか。

大きく誤解されているのが、保護されるのは、意匠登録されたデザインと全く同じデザインだけではないということです。
意匠権は類似する意匠にまで権利がおよびます。

意匠権の具体例

多くの知的財産権を取得しているHitoe Foldについて、過去にあった事例をもとに具体的にご説明します。
Hitoe Foldは、特許2件、意匠5件の知的財産権を出願し、その核心となるアイデアやデザインを保護しています。

例を挙げると、下図は、意匠登録1659079です。財布の基本構成を保護するために登録したものです。点線部は申請に含まれず、赤く塗られた部分のみを登録しています。部分意匠登録という手法です。

部分意匠とは
『独創的で特徴ある部分を取り入れつつ意匠全体で侵害を避ける巧妙な模倣が増加し、十分にその投資を保護することができないものとなっていたことから、物品の部分に係る意匠も保護対象となるように改正したものである。』(編集 特許庁「工業所有権法(産業財産権法) 逐条解説」より)

Hitoe Fold 意匠登録

 

類似と考えられる例

先に記載したように、意匠権では全く同じデザインだけでなく、類似のデザインも保護されます。多くの場合、類似か否かの判断が、大きな争点となります。そのため複数の指針が特許庁により示されており、その一部をご紹介します。
例えば先の意匠登録1659079で、ステッチの処理方法、切り欠き部分の大きさ・形状を変更したとします。

|ステッチの処理方法
現状のステッチ方法も、端部の革を回り込ませたり、外でなく内側でステッチする方法も、容易に思いつく一般的な手法です。
『ありふれた形状等の部分は、相対的に影響が小さい』
(特許庁 意匠の審査基準及び審査の運用 49p)
とあり、現状のステッチの納まりを他の一般的な方法に変更しても、類似とみなされる可能性が高いと考えられます。

|切り欠き部分の大きさ・形状
『大きさの違いは、当該意匠の属する分野において常識的な範囲内のものであれば、ほとんど影響を与えない』
(特許庁 意匠の審査基準及び審査の運用 50p)
とあり、切り欠き部の大きさの違いは類似とみなされる可能性が高いと思われます。また、切り欠きは、登録部分に含まれず、形状の違いは考慮されないと考えられます。

実際に、上記の意匠登録1659079については、類似する他社のクラウドファンディング予定製品に対し、意匠法37条に基づく差し止め請求を行い、販売予定を中止いただいた事例があります。

最後に

特許や意匠権のほかにも、デザインを保護する法律や権利として、不正競争防止法や著作権などがあります。
なお、知的財産権の侵害は、損賠賠償などの民事だけでなく、刑事罰の対象になる場合もあります。そのため製品開発する場合、慎重に調査する必要があります。
SYRINXは、知的財産権侵害による被害を予防しながら、さらなる市場の発展に貢献できるように、保有・出願する50以上の知的財産権の一覧を公開し、第三者が調査しやすいようにしています。

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