
人と革の持続可能な関係
最近「Vegan leather(ヴィーガンレザー)」が、注目を集めています。
「ヴィーガンレザー」とは、いわゆる「フェイクレザー」ですが、その中でも注目されているのは、天然素材由来のヴィーガンレザーです。
既に購入できるものとしては、写真のパイナップルの繊維を用いたピニャテックスがあります。パイナップルの繊維の不織布をポリウレタン樹脂でコーティングした材料で、スペインで製造しています。シャネルがピニャテクスを使用した帽子を発売したことで、注目をあつめました。ただ、その質感は、繊維密度がスカスカで、革というよりは紙や不織布に近く、革の代用にはなり得ません。またポリウレタンも含まれ、海洋汚染や生分解性も気掛かりです。
その他の期待される素材として、きのこの菌糸を用いたヴィーガンレザーの開発が進んでいます。CO2を排出せず、水の使用量も少ないエコ素材で、SYRINXも早く試してみたく、注目しています。
こういったヴィーガンレザーが注目されるのは、牛にかかわる環境問題からです。近年、牛の「げっぷ」に含まれるメタンガスが、地球温暖化の主要な原因の一つにあげられています。そのため、ゲップに含まれるメタンガスを減らしたり、げっぷを少なくする添加剤や品種改良の研究が進むと同時に、排出量規制の検討も進んでいます。そのような流れから、植物由来の代用肉の開発も熱を帯びています。代用肉が普及し、牛の飼育量がわずかになれば、革の原皮が少なくなるため、ヴィーガンレザーが注目されているのです。
しかしそれに伴い、最近気になるのは「革は環境に悪い」という誤った情報発信です。
牛革は、食肉の副産物のリサイクル品で、エコな素材です。
牛革を作るために、牛を飼育することも、殺処分することもありません。
もし皮を革としてリサイクルせずに廃棄すれば、焼却処分により深刻なCO2排出問題につながります。将来、代用肉が普及した場合に備え、ヴィーガンレザーの開発は活発です。しかし、頂いた命を大切にし、副産物をリサイクルする革が、エコであることに変わりありません。
メタンは、水田からも発生します。世界のおよそ半数の人はコメが主食で、メタンを減らすために水田をなくすことはできません。そのため、栽培方法でメタンの発生を減らす研究が重要です。畜産も同様で、大切なのは、メタン排出量を持続可能な範囲にコントロールすることです。その限り、革産業は、廃棄物となる皮を革へとリサイクルする、環境に優しい産業として必要です。
革は、有史以前から存在し、人類と歴史をともにしてきました。
当社も、微力ながら、「人と革がサスティナブルな関係を維持するためにできること」を模索したいと考えています。